2014年12月23日火曜日

The Vanishing of Ethan Carter ストーリー考察(ネタバレ)

一人称視点のアドベンチャーゲーム、「The Vanishing of Ethan Carter」がSteamホリデーセールで安くなってたんで購入しました。11月くらいにプロ翻訳家による日本語化MODが公開されてちょっと話題になってたやつです。これマジでゲーム画面かよって驚くくらい綺麗なスクリーンショットが目を引いて気になってたんですよね。

主人公の探偵ポール・プロスペローがある日レッドクリーグ・バレーに住む少年イーサン・カーターからの助けを求める手紙を受け取り、この寂れた田舎町を訪れるところからゲームは始まります。鬱蒼と木々が茂る森を線路沿いに歩いて村を目指していると、両足を切断された死体を発見する主人公。何やらよからぬことが村で起こっているのは明白でした。

主人公のポールはなんかサイコメトリー的な超能力があって、事件現場を観察し、遺留品を集めることで当時の様子を見ることができる、そうやって村で起こった惨劇を追体験していくことでイーサンの行方を追っていきます。
そこそこ広い村を歩き回ってパズルを解いていくアドベンチャーゲームなんですが、ゲーム中にヒントを示すようなものはほとんどありません。ストーリーも断片的に語られるのみで、語られる順番もプレイヤーがパズルを発見、解読する順序によって違ってくるので1回のプレイでこの物語の全貌を掴むのは難しい。多分人によって解釈も異なってくるストーリーだと思います。以下に自分なりの解釈をまとめるけど、1周しかプレイしてないので細かいところまで理解できてません。2周目やれば違う解釈になるかも。

↓以下めっちゃネタバレ↓











































イーサン・カーターは物語を創作するのが好きな少年だった。村の至る所で見つかる彼によって書かれた物語のメモと、新聞の切り抜きを見比べると判るように、実際の出来事に着想を得て自分の中でお伽話を描いていた。
そんなイーサンを、家族は快く思っていなかった。つまらない妄想はやめろ、現実を見ろと、自分の創作活動を否定する。イーサンは、まるで家族が自分を殺そうとしているかのように感じていた。
そんな家族から逃げるように、誰も来ない地下室で今日も物語を紡ぎ出すイーサン。主人公は超能力探偵のポール・プロスペロー。家族から逃げる自分を守ってくれる存在を想像し創造する。「眠れる者」という恐ろしい存在に操られ、自分を殺そうとしてくる家族達から自分を助けて、と。

やがてイーサンのもとに辿り着いたポール(=プレイヤー)は、これが自分の物語であり、イーサンの物語であることを思い出す。自分の語り口が何故か過去形になっていたのも、超能力によって事件現場の過去を見ることができたのも、それらは全て自分(イーサン)によって創られたものだったから。「眠れる者」を信奉し、狂気に支配された自分の家族。「眠れる者」とは他でもない、この物語を夢想するイーサン自身だった。

そこへ家族のみんながやってくる。「超能力探偵ポール・プロスペロー」を夢中で書いていたイーサンへ夕飯の時間を知らせる為に。みんな本当はイーサンを当たり前のように心配していたんだと感じる場面。しかしそこでもちょっとした口論が起きて、母親が持っていたランプの火が地下室の家具に引火してしまう。慌てて引き上げようと家族はイーサンを呼ぶが、イーサンは地下室の扉を閉めて閉じこもってしまう。煙が充満する地下室で眠りにつくイーサンと、地上で必死にバケツに入った水を運ぶ両親。イーサンの妄想の中で兄を殺した祖父は、兄の服に着いた火の粉を必死に振り払ってる。叔父が柱に寄りかかり項垂れているのは、イーサンへの悪態を吐いた自分への後悔だろうか。

イーサンの物語とはまるで正反対のように、必死にイーサンを救おうとする家族の姿を最後にカメラはフェードアウトしていく。誰もが経験する思春期におけるちょっとした家族とのすれ違いや、ほんの少しの現実世界との隔たりが産んだ悲劇、それがこのゲームのテーマだったように思う。